今回は、愛知県犬山市で飲食店を経営していらしゃる松本悠司さんのお店Swan’s cafe Juce standにお訪ねし、お話をうかがいました。
松本さんはカフェ経営、みかん農家、アクセサリー制作、釣り用品開発など、さまざまな分野で活動されています。Fab-coreではレーザー加工機を利用して、ルアーのキットや店舗のディスプレイなどを主に制作しています。最近は釣り用品の開発に注力しており、2024年11月16日Fab-coreでワークショップの開催を予定しています。(オリジナルルアーをレーザー加工機で作ってみよう)
佐藤:そもそもの話をおうかがいしてもいいですか?カフェをやる前は何をしていらっしゃったんですか?
松本:シンガーソングライター、ミュージシャンです。
佐藤:え!(笑)知らなかったです。
松本:でも、大学は機械工学科なんです。大学の4年生のときにソニーミュージックのオーディションに受かって、機械科卒業したけど芸能事務所にはいっちゃった。
佐藤:そうなんですか!
松本:ただ、音楽もやってたけど、元々ものづくりが好きで、アクセサリー作りも音楽をやりながらやってたんです。音楽の契約が終わって、次なにをやろうかなってなったときに、ライブができるカフェを作ろうと思ったんです。犬山にたまたまラジオのパーソナリティで来てたので、そういう縁もあって犬山に空き店舗があるのを知ってライブカフェやることになりました。
佐藤:そこから、アクセサリーを作り始めたのはどういうきっかけで?
松本:カフェをやっていた時に、知り合いが小型のレーザー機械をもっていたのをきっかけに竹のアクセサリーを始めました。ただそのレーザーの精度が悪くて、調べてるうちにトロテックのレーザーを知って、いろんなファブ施設に行きました。ただ、名古屋は利用者が多くて、競争率が高かったので、いろいろ調べてFab-coreに辿り着いたという。
佐藤:そうなんですね。
松本:Fab-coreにたどり着いたときは、ルアー作りの方に集中し始めて、アクセサリーはあんまりやってないんですけど。
アクセサリーは、今は自分の店とネットで販売してます。ネットで20種類くらい販売しているんですけど、ある1つのデザインだけレビューが良くて売れてるんです。星5つあるとみんな安心して買うんです。月に2~3個注文がくるんですよ。あらかじめパーツは切ってあるので、注文が入ったら組み立て、パーツがなくなってきたらレーザーでカットしにいく。これはペアで3500円で売ってるんです。でも、売れちゃいます。それは特許で守ってるから類似品がない。意匠登録を取るというのはアイテムを守る手だから。
佐藤:その意匠登録をするとかその辺のノウハウは?
松本:機械科です。工業デザインもやってたので
佐藤:機械科で(笑)なるほど。
松本:僕は自分で発明したものとかそういうのをこよなく愛しているので、絶対に真似されたくないんです。なので真似されることはわかりきっているんです。だけど、少しでも守る、で、日本においては意匠登録してますって出すだけで意外とみんな躊躇してくれるんで。それを押し出して、三越とかパルコとかハンズとか、いろんなところに声をかけて出店していた時期もあったんですよ。6年くらいまえかな。
佐藤:へぇー
松本:自分でデザインした商品がお金になる。センスをお金に変える、価値をお金に変えるという僕が目指している生き方。一応良かったんだけど、でもやっぱり
佐藤:売れなくなってきた?
松本:売れなくなってきているのもあるし、レーザーが普通になりすぎちゃった。前はイベント出たとき、どうやって作ってるんですかて言われたけど、今は、あぁレーザーだねっみたいな。
佐藤:(笑)なるほど。
松本:その会話がすごい嫌で。このswandropsというアクセサリーなんですけど、この交差形状だけしか売りがなくなってしまって。過去にあったような感動がなくなっちゃった。(※アクセサリーの写真は下記に記載)
佐藤:ルアーの話は、わりとそれと入れ替わる感じできたってことですか。
松本:そうです。コロナの時にアクセサリーイベントが全部なくなってしまって。店もできないし、農業はやってたんですけど、一度このタイミングで、釣り道具を簡単につくる仕組みを開発しようと思った。このルアーもレーザーでつくりました。
佐藤:このパーツは何のパーツですか?
松本:木のルアーは金具がすぐ抜けちゃうです。硬い木で作るなら抜けないですけど、バルサだと一瞬でぬけちゃう。でもバルサじゃないと加工が難しいんですよ。なので僕はバルサだけど簡単に作れる仕組みを作ろうと思って、このスクリューアイキーパーという部品を開発してこのネジ穴の径とあわせてあるんですよ。
佐藤:確かに。抜けないようになってるんですね。これは実用新案ですか?特許?
松本:実用新案です。特許はとってないです。結局特許はお金かかるんで。特許庁実用新案ていう言い方をしてます(笑)これでもうでっかいバスが来ても全然抜けないです。
佐藤:なるほど。
松本:これはありそうでなかったんです。この部品だけはプラスチック製品を使ってますが、従来のルアーよりも環境にやさしいものですよっていうのを謳い文句にしてます。
佐藤:これはご自分で工夫してみつけられたんですか。
松本:そうです。小学校の時から作ってて、1個作るのにかなり時間がかかってた。しかも同じものを作ることはできないんです。カッターでこのカーブを切るのはめちゃくちゃ難しいんです。レーザーでつくることによっておもりも簡単に配置することができる。制作時間が従来の5分の1以下、子供でも作れるようになりました。画期的なものを作ったんですけど、さほど売れてないのが笑えるところで。
佐藤:これでもワークショップとかやれば
松本:そうそう、ワークショップとかやれば売れると思うんです。ワークショップの内容としては間違いなく盛り上がると思います。
佐藤:意匠登録とか実用新案を取るというのは何かきっかけがあったんですか?
松本:小学校の時に読んでた釣り雑誌で、いろんな釣具店がその店のオリジナル商品を販売してた時に下の方に実用新案申請中とか意匠登録済みとか書いてあって、その時に初めてこの言葉はいったいなんなんだろう?とって思ったのが小学校6年から中学生くらい
佐藤:早いですね(笑)。そういう記憶があったってことですね。
松本:そうです。だからその時にこの言葉の意味どういうことだろうなって思ったのがもしかしたら、初めのきっかけかもしれない。で、工業デザインやったり、特許のこと調べたりするうちに、そうやって守ることできるんだって気づいた。
佐藤:じゃあ、誰かにアドバイスされたとかそういうのはなく、
松本:ないです。僕は習うの嫌いで。
佐藤:笑。どういうスタンスでものづくりをされていますか?商売とかビジネスに関してはどうでしょう。
松本:僕は、保育園からずっとものづくりしてた。できるかなののっぽさんになりたかったんです。なにかの説明書を見て作るんじゃなくて、自分で生み出したかった、で生み出したらなにが起こるかっていうと、やはり評価されたいんですよね。子供の時なら、親とか先生、友達が褒めてくれることでしょうか。でも現実的に評価されるって何かっていうとお金です。お金を出して買ってもらうって価値なんです。結局それに気づいちゃった。
でも、いま余裕で食えてるかっていうと全然食えないんですよ。時代の流れもありますけど、時代が変化しながらも、ちゃんとそのしっかりお金に変えるプロセスっていうのが僕は弱くて。みかんジュースも観光パンフにのせてもらって、犬山産を謳ってる店は他にないので、目立ってフィーチャーもされてるけど、じゃあ稼げるかっていうと春と夏だけ。秋冬は撃沈みたいなことが起きちゃてて、いい線いってるんだけど。
僕としては自分から生み出したものを売るというのが基本だけど、ちゃんとそこで生きるということを目指したいんですよ。これが今、自分の目標。なに屋さんですかって言われたら、カフェのオーナーだし、ひょんな出会いもあってみかん農家もやってて、じゃあなんで釣り道具やってるんですかって言われたら釣りがとにかく好きだし、それと環境のことも考えてるから。題にしてみたら「好きなことやってる人」。だけど、その中で、オリジナリティーで生み出すことを基本としている。44歳になりますけど、保育園の頃からスタンスが変わってないかなと。
佐藤:(笑)なるほど。
松本:だからレーザー使っていま釣り道具ですね、これでなんとか稼いでバンと当てたい(笑)結局センスをお金に変える仕事を続けていると、四苦八苦しながら生み出していくのが基本になっちゃうと思います。小さい夢の積み重ね的な。
佐藤:今後Fab-coreでものづくりをしてみたい方にアドバイスはありますか?
松本:一つだけ大事なことが一つあって、誰かの模倣をしている間はオリジナルの種でしかなくて、誰かが考えたもののドッキングじゃん?みたいなことってよくあるんです。オリジナリティを生み出した方が絶対いい。それはたぶん若い人とか、ものを作りたい人に共通するんじゃないかと。生み出すのは大変だと思うんです。でもそこで生み出されたものの価値ってめちゃくちゃ感動があります。
あと、もうひとつだけ僕が最後に全て語っちゃう締めなんですけど、センスとものづくりは自分を絶対に裏切らないです。
佐藤:自分自身を裏切らないってことですね?
松本:人がどう言う価値を与えようと、自分が生み出して、自分が得た感動は裏切らない。それは絶対あると思う。それに対しての熱量は絶対無駄にならないし、自分の中の価値としては絶対変わらない。ただ裏切ることがひとつあって、いい加減にまぁこのぐらいでいいやろみたいにやって作ったものは裏切ります。それだけかな。
佐藤:作ったものの価値や評価をお金に変えることが当たり前に思えないのは、周りにそういう人がいないっていうのも大きいと思うんですよ。だからそういう意味も含めて、次にワークショップをやる時に、これ売ってるんだよとか、そういうふうにアイデアを売れるようにできるみたいなことを見せていける場になるといいなと思ってます。
松本:ありがとうございます。さっきのアクセサリーも変な話イベントで1日で20万売ったって話したっていうと、はー?てなるじゃないですか。これができる可能性があるんだよっていうのをいうだけでたぶん火がつくかもしれない
佐藤:そうですね、やってみようと思うし。
松本:今後たぶん、ものづくりしたい子っているはずなんです、きっかけがないだけで、だから、そういう子達が自分の表現をかたちにすることに関して言ったらすごい良い場所なはずなんですよ。
それで、もうちょっとみんなに知れ渡って、自分のセンスをかたちにすることができるきっかけの場所になるんじゃないかなって、僕的には思います。
ありがとうございます。