3Dプリンタの技術本ではよくiPhoneケースのモデリングがとりあげられている。
樹脂を熱で溶かして積み重ねていく熱溶解積層方式の3DプリンタでiPhoneケースをつくるのは実用的なのか? という疑問を持ちつつ「3Dプリンタのためのデータ作成研修」でiPhoneケースのモデリングの講師をしてみた。
ということで研修前に実験したことを報告!
3Dプリンタでもっとも出力しやすいかたちと方向
最もシンプルなかたちを下向き(ケースの裏面が台に接する)で出力。
この方向に出力するのが一番時間が短くて、フィラメントの量がすくない。
(Cube2での出力時間:1時間 フィラメント:13.7g)
「こんなシンプルなかたちを3Dプリンタで作る意味がそもそもあるのか?せっかく3Dプリンタなんだからもっと凹凸のあるオリジナルデザインにしたい」
もちろん、おっしゃる通り。
だが、3Dプリンタはつみ木をつみあげて形を作るように一層ずつ層を積み上げながら造形していくもの。支えるものがなければ空中にフィラメントを置くことはできない。
凸凹したデザインだと支えるもの(サポート)が必要なのだ。
裏面が台に接するようにに出力すると凸凹したデザイン部分にサポートがついてしまう。サポートはとれるが見た目がよくない。ヤスリで表面をみがくのは手間がかかる。
裏面を上向きに出力してもサポートは必要だが、内側の見えない部分なので上向きに出力した方が良いだろう。
まぁ、そうすると時間は3倍、フィラメントの量は2倍になってしまうのだ!
(Cube2での出力時間:3時間5分 フィラメント:27.7g)
時間がかかっても好きなものを作りたいのよ。という方はチャレンジしよう。
サポートとるのはめちゃくちゃたいへんだけど。
そこで考えた。そもそもこんなサポートは必要なのか。オリジナルのサポートもありなのでは?
サポートがとりやすいように考えたイボイボサポート
出力スタート!
一見うまくいってそうに見えたのだが、
こんな結果に。サポートになってなかった。フィラメントを支えきれずに垂れて流れている。
ということを、バイトさんに話したらこんなものを作ってくれた。
円柱びっしりオリジナルサポート。これをCube Softwareに読み込んで3Dプリンタで出力できるように変換すると、出力時間9時間の表示!! もちろん出力中止!
デフォルトのサポートよりも時間がかかるという恐ろしい子。
サポートはまだまだ考察の余地あり。と問題を残しつつ、縦向きで出力。
(Cube2での出力時間:2時間40分 フィラメント:21.1g)
上向きに出すよりはサポートをとるのが楽かも。これは裏面がつるっとした場合。凸凹しているとそこにもサポートがつくのでデザインによってはもっと時間もかかるし、フィラメントも必要。
考え方をかえて、凹凸のあるデザインより形をくり抜くようなデザインにしてみたらどうだろうか?
これは、裏面を下向きに出力。
(Cube2での出力時間:1時間 フィラメント:12.37g)
参考事例
フリーのCADソフト123D DesignのサンプルからダウンロードできるiPhoneケース。
裏面を下向きに出力。サポートあり。ギザギザした歯の部分にサポートがついた。これぐらいの凸凹ならサポートもとりやすいが表面がザラザラしている。(iPhone5のケースなのにサイズがあわないのでダウンロードする方は要注意)
おまけ:研修中につくってみた。
まとめ
【表】iPhoneケースの出力
3Dプリンタ:Cube2 フィラメント:PLA
結論
熱溶解積層方式の3DプリンタでiPhoneケースをつくるならデザインは
「盛るより開けろ!」だ。
iPhoneケースは形として3Dプリンタでつくるのには向いてないと思う!
注意
ちなみにここで作ったのはすべてiPhone5s用のケース。iPhone6以降だとfab-coreにあるCube2ではサイズがぎりぎりでデザインに よっては出力できない。また、この研修を企画したときにはまだiPhone6が発売されていなかったことから5s用のケースになっている。